田原地区の獅子舞








 串本町田原地区の獅子舞(木葉神社)
 獅子は雄獅子で、屋台の締太鼓は左付け。獅子舞の演目は、現在伝承されているもので10演目・14種類があり、木葉神社境内での奉納・街回り・家固め等いろいろな状況によって、「獅子係」(獅子舞のメンバーの中で2名が役を持ち、獅子舞運行の責任者となる)が演目等を決定します。

 それぞれの演目の由来については個人的にも資料等がなく、詳細は判りませんが、伊勢獅子から派生したとも言われており、古座・高池等近郷の獅子舞と同様と思われます。

 
・幣の舞(へいのまい)2種類「街回り」と「四隅」
演舞の最初の舞です。鈴と幣を持ち、獅子頭の幕は絞ります。祭礼当日の本番と天狗の場で演舞す形が本来のもので、「四隅(よすま)」といいます。この四隅という名前があるのは、正式な舞と街回りなどで演舞す簡略形と2種類 があるからです。舞の中で四隅があるのは、他に「剣の舞(つるぎのまい)」と「乱 獅子(らんじし)」です。どちらも簡略形の舞があります。


・神供の舞(しんぐのまい)(新宮の舞?)
2番目の舞ですが、この舞が演じられるのは、祭礼当日の本番と天狗の場だけです。 「幣の舞」と同様、鈴と幣を持ち、獅子頭の幕は絞ります。


・神明讃(しんめいさん・扇の舞)
3番目の舞です。日の丸扇を2つ持ちます。この舞も獅子頭の幕は絞ります。


・剣の舞(つるぎのまい)2種類「街回り」と「四隅」
4番目の舞です。ここからは、獅子頭の幕を広げ、幕の中に演者の他何人かが入 って、幕全体を高く大きく広げます。獅子の印象が一変します。
1〜3の獅子舞を「幣獅子」、幕を広げた獅子舞を「幕獅子」ともいうそうです。読んで字のごとく「剣」を持っての演舞です。邪気を祓い、家内安全・商売繁盛 をかなえる「神剣」を象徴していて、演目の中でも重要な舞のひとつです。


・乱獅子(らんじし)2種類「街回り」と「四隅」
田原では、俗に「だんしし」といいます。太鼓は「上太鼓(うわだいこ)」と「下太鼓(しただいこ)」を二人の演者がそれ ぞれを叩いて拍子を合わせ、リズムを刻みます。
舞は豪快です。獅子頭を小刻みに震わせ、幕を大きく張って、暴れながらも腰が据 わった雄獅子(おんじし)の乱舞がみものです。


・寝獅子(ねじし)
本番と天狗の場だけの舞です。舞い踊った獅子が、心地よく疲れた身体を休ませるため、寝場所を探し、やがて寝てしまう、という設定の舞です。


・天狗の舞(てんぐ)
気持ちよく寝ている獅子のところへ小天狗(神様の使い)が舞い降りて、寝ている 獅子にいたずらを繰り返し、ついには獅子が目を覚ましてしまう。
目を覚まされて怒った獅子が、小天狗の持っている宝物(幣・扇・剣)を狙って捕まえようとするが、小天狗はひらりひらりと身をかわし捕まらない。
やがて、遊びに 飽きた小天狗が、宝物を置いて(忘れて?)帰ってしまう、という設定です。 
1番と2番はリズムが違います。天狗の所作と笛は、2番の途中から1番 のそれを繰り返します。


・扇喰い(おうぎくい) 荒獅子
天狗の舞に引き続いて演舞します。足のつま先で扇をはさみ獅子にくわえさせる、という見せ場があり、また演舞す時 間が長いため、技術・体力ともに難しい演目です。


・花掛り(はながかり) 荒獅子
天狗が「幣」を持ったときの最後の舞です。
「扇喰い」ほど長くはないですが、30分〜40分ほどの時間を要します。
最後に獅子がくす玉を割り、花吹雪を散らして終了ます。
最後に「花」を拾う場面があります。


・剣喰い(つるぎくい) 荒獅子
天狗が「剣」を持ったときの最後の舞です。この舞のときは、4番目「剣の舞」をせずに、「神明讃」から直に「乱獅子」へと 順序が飛びます。
そして、天狗が退場したとき、「乱獅子」の笛・太鼓を終了し、「剣の舞」 (四隅)を演舞します。
 

※本文は、田原獅子保存会、中道氏の「獅子舞神楽について」を引用させていただきました。
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